岩手大学工学部および地域防災研究センターでは、平成19年に地域を支える「エコリーダー」・「防災リーダー」育成プログラムを開講し、本年度も継続して実施しております。このたび、明石工業高等専門学校で防災教育に関わっている先生方が来学し、取り組みの情報交換および講義の様子を視察しました。
■ 防災教育に関わる情報交換
6月28日(金)は15:00より地域防災研究センター会議室にて、明石高専の玉田先生(教育・研究プロジェクト支援室 リサーチ・アドミニストレーター)と越谷副センター長と防災教育に関わる情報交換を行いました。明石高専では近畿圏の高等専門学校と連携して防災教育に取り組んでおり、そのための実践教育の方策についてさまざまな事例研究を行っているとのことでした。本センターからはセンターの防災活動の実施方針や実績について説明を行いました。特に、防災リーダー育成プログラムや実践的危機管理講座については実施に至った経緯、プログラムの内容など詳しく説明しました。
■ リーダー育成プログラムの講義視察(防災リーダー・コース テーマ1・地震)
6月29日(土)は防災リーダー育成コース、テーマ別講習「地震」を以下のように実施しました。
1.地域を支える「防災リーダー」の必要性
本日からテーマ別講習が始まりました。本日が初回であることから、防災リーダーの必要性を説明するために、自助、公助、共助等の必要性について講義しました。
2.地震の基礎知識に関する講義
午前は座学で、地震に関する基礎知識の講義を行いました。内容は、今までの地震の被害、日本は地震国、地震の原因、地殻変動、地震は断層運動、地震発生のメカニズム、地震波、地震計、震度とマグニチュード、余震、緊急地震速報などでしたが、理解が困難であろうと思われる部分についてはイラスト、写真、アニメーションなどを使用して講義を実施しました。
3.地盤探査野外実験(高精度表面波探査)
午後最初の講義は、野外における体験実験を行いました。簡便に実施可能な地盤探査実験として、高精度表面波探査実験を共用講義棟の横の通路において実施しました。この実験では、浅部の地盤のつよさを簡単に調べることが可能で、現場で地盤の地下構造を可視化することまでできます。地震計を24個1直線に配置して、人力によるカケヤの打撃により振動を発生させて、どのように伝播するか測定、解析します。実験は成功し、約10mの深度までの岩手大学の2次元的な地下構造を求めることができました。受講生も自らカケヤを手に取り実験に参加していました。
4.「紙ぶるる」による建物の揺れ方を調べる実験
この実験は、名古屋大学、応用地震計測(株)が作成した簡易耐震実験の模型「紙ぶるる」を作成し、家の揺れ方を調べるものです。はさみや両面テープを使い悪戦苦闘しながら紙の家を受講生が無事に完成させました。「紙ぶるる」を揺らして模型の揺れ方を体験する実験では、屋根の有無、筋交の有無により揺れ方がかなり異なることを学んでもらいました。
5.地震ハザードステーションについて
地震ハザードステーションJーSHISを説明し、実際にインターネットで閲覧して受講生ご自身の興味のあるところの地震ハザードを調査してもらいました。地盤増幅率、揺れの確率など思ってもいなかった結果だったようです。
6.アンケート調査による詳細震度分布
岩手県内のいくつかの市における地震時の揺れのアンケート調査の解析結果を紹介しました。これは、岩手大学の我々の研究室で調査、分析したものです。東北地方太平洋沖地震やその余震による地震の被害と揺れの分布の対応に、受講生も興味を持って受講していました。
今回の講義では、各講義のたびに受講生から多数の質問がだされ、若干講義時間が延びてしまいましたが、活発な議論が行えたことは良かったのではないでしょうか。特に、明石高専の鍋島先生(都市システム工学科 学科長)は最後のアンケート震度調査に興味があったようで、兵庫でもこの調査を試してみたいと言っておりました。
山本准教授による講義(テーマ1・地震) 地盤探査の実験(高精度表面波探査の実験)
視察の様子 受講生が組み立てた耐震教材(紙ぶるる)