「第二回災害文化研究会」を開催しました

 11月26日(土)~27(日)にかけて、第二回目となる「災害文化研究会」を福島大学うつくしまふくしま未来支援センターとの共催で開催しました。
 初日の講演・研究発表およびディスカッションでは、はじめに岩手大学の山崎友子教授(地域防災研究センター災害文化部門兼務)から趣旨説明があり、災害を総体的に捉える「災害文化」の概念について解説がありました。続けて、東京都立大学名誉教授の堀信行氏による講演では、物事の実相に近づくにはその事象を複合的・俯瞰的に見ることが大切であること、また、世界観という軸で災害を捉えることの大切さについて、西アフリカ・二ジュールにおける自然環境と生活様式を引き合いに出しながら示され、災害文化が有する諸相および共通要素についての指摘がありました。
 研究報告では、それぞれが取り組んでいる震災復興・自然災害に関する研究について、岩手大学から菊池義浩特任助教、松林由里子助教、福島大学からは井上健教授による報告がありました。後半のディスカッションでは、被災地における水産業の現状に焦点を当てた議論が行われました。福島大学の初澤敏生教授と、岩手大学の山崎憲治元教授による論点提示のあと、会場から活発な意見や質問が挙げられ、被災地の行政機関や教育機関から参加していた来場者との意見交換も図られました。
 二日目は初澤教授のコーディネートのもと、相馬市~南相馬市~飯館村のルートで福島各所の巡検を行いました。松川浦(相馬市)周辺の漁港施設の復興状況や、新設された観光・交流施設を備える常磐自動車道のサービスエリア(南相馬鹿島スマートインターチェンジ)、今年7月に原発事故による避難指示が解除された小高区(南相馬市)の様子など、発災から5年半以上が経過した被災地の実態を見学しました。研究会を通じて、災害文化という切り口で震災復興・地域防災を考える貴重な機会となりました。
開催日時: 2016年11月26日(土)~27日(日)
開催場所: 1日目 福島大学共通講義棟M-4教室
2日目 巡検 相馬(松川浦周辺の津波被災地)・南相馬・避難解除された小高・飯館

プログラム:

<1日目>
 講演・研究発表およびディスカッション
  1.趣旨説明 山崎友子(岩手大学)
  2.講演 堀信行 氏(東京都立大学名誉教授)
     アフリカを切り口として「災害文化」を考える
  3.研究発表
    1)菊池義浩(岩手大学)
     ~岩手の復興状況:災害状常襲地での生活再建と展望~
    2)松林由里子(岩手大学)
     ~台風10号による岩手県内の流木災害について~
    3)井上健(福島大学)
     ~「よそ者」と「若者」に焦点を当てた教育実践~
       被災地の活動から学ぶ福島大学の取り組み
   4.ディスカッション:東日本大震災被災地の水産業の今
    ○ディスカッサント
     福島から~初澤敏生(福島大学)
       福島県における漁業復興の課題
     岩手から~山崎憲治(岩手大学)
       漁業センサス2008年と2013年を比較して課題を探る
    ○コーディネーター 堀信行 氏(前掲)
  5.情報・意見交換
     菅沼雲龍 氏(桜美林大学)他:
      “Japan Tsunami” (ケンタッキー大学出版部)の出版と米国の日本災害研究の状況等
<2日目>
 福島巡検
  案内・解説:初澤敏生(前掲)
  集合場所:福島駅前(具体的な場所は1日目にご案内します)
  行程:福島駅~相馬(松川浦周辺の津波被災地見学)~南相馬~昼食~
     避難解除された小高~飯館~福島駅着

撮影: 田村紘大(岩手大学 1年)

  1日目 講演・研究発表およびディスカッション

 1.講演 堀信行先生

講演(堀信行 氏)

 2.研究発表 菊池氏

研究発表(菊池義浩 特任助教)

 3.研究発表 松林氏

研究発表(松林由里子 助教)

 4.フロアからの発言

フロアからの発言

 5.研究発表 井上氏

研究発表(井上健 教授)

 6.ディスカッション 初沢氏

ディスカッション(初澤敏生 教授)

 7.ディスカッション 山崎氏

ディスカッション(山崎憲治 元岩手大学教授)

 8.フロアとのディスカッション

フロアとのディスカッション

2日目 巡検

 9.巡検(霊山の線量計)

霊山パーキングの線量計

 10.松川浦共同利用施設の復興整備2

松川浦漁港共同利用施設の復興整備

 11.松川浦漁港

松川浦の漁港

 12.堤防の再建

再建中の防潮堤

 13.南相馬鹿島サービスエリア

南相馬鹿島サービスエリア

 14.何段にも重ねられるフレコン

何段にも重ねられるフレコンバック

 16.閉められたままのポスト(小高)

閉められたままのポスト(南相馬市小高区)

 15.再開した小高駅

再開した小高駅