第六回地域防災フォーラムを、「未来を築け 被災地に学ぶ、被災地の子ども達とともに~災害文化の醸成・継承・伝播」というタイトルで、11月22日(金曜)に開催しました。今回のフォーラムは「地域と協働した津波防災モデル開発研究」(科学研究費基盤(C)23531237)との共同開催でした。災害の特質・災害文化という概念について研究をもとに提案し、被災地で生まれた紙芝居による活動、被災地の中学生の語り部活動という具体的な生の声から、「災害文化」への理解を深めていただくよう構想したところ、約200名の参加がありました。80名の小学生の参加もあり、別会場に映像を配信するという新しい試みをしました。メイン会場から別会場の小学生に呼びかけると、手を振ってこたえる小学生の姿がメイン会場のスクリーンに映し出され、和やかな雰囲気が醸し出されました。
紙芝居『つなみ』、被災地の中学生の語り部活動、民間団体による社会心理学的心のケア、パネル・デイスカッション「復興の鍵は子ども達にある」、柳田邦男氏の特別メッセージ、宣言:未来を築く被災地の子どもの声、と盛りだくさんのメニューを通して、災害をトータルに捉える視点の確立、災害文化が予報から復興まで深くかかわることを明示することができました。災害文化確立という課題に対して、教育が果たす役割が極めて大きいことが示され、子ども達の可能性の大きさ・その可能性を開く教育の役割・子ども達が街づくりに参画する体制を作ることの重要性が明らかになりました。震災時に被災地の中学校の生徒会長であった村井旬さんによる「・・・三陸が日本の理想になる時代を作っていこう」という宣言を全員の拍手で確認して終了しました。
「それぞれ短い時間の中に、貴重なメッセージが凝縮され、大変有意義なフォーラムでした」等々の感想が寄せられました。その一部を紹介します。
<小学生の感想>
○災害は無くならない。だからこその『防災』なんだと思いました。内陸だからと、「津波なんてどこふく風」と言ってないで、沿岸の方々のつらい体験を『災害文化』として、内陸や次世代の人たちにうけついでいくのが一番重要なんだということがわかりました。(6年、YSさん)
○田老第一中学校の人達の感想を聞いて、津波のこわさやおそろしさがよく分かりました。大切な人を失った人もいると思うけど、それでも前に進もうと思うみなさんに感動しました。紙しばいからは、津波のこわさはもちろん、どんな津波でもにげようと思える、学べる紙しばいでした。(NCさん)
○フォーラムでは、自分では体験していないことや知らないことが分かりました。特に、田老地区の人々の思っていることを知り、家族と暮らすことのうれしさや、みんなは仲間、みんなと協力することの大切さなどをあらためて感じました。また、田畑ヨシさんの紙しばい『つなみ』では、自分の命は自分で守ることを教えてもらいました。ヨッちゃんは2回も体験して、本当にこわかったと思いました。また機会があったら来たいと思ったし、田老に行ってみたくなりました。(6年、MTさん)
<大学生の感想>
○第1部を聞き、そこから考えたことは「震災がもたらしたもの」についてである。震災がもたらしたものは多くの悲しみの他にひとつの教訓とも呼べるものではないかと考えた。この災害から、地域社会がそれまでに持っていた課題が明らかにされたのだ。私達は、この震災が起きる前まで「私なら大丈夫だ」と、一種の平和ボケをしていたと思う。・・・第2部ではディスカッション形式でお話しを聞いた。印象に残っている言葉が二つある。一つは「学校、学年の枠組みを超えて一緒に学ぶ」ということだ。老若男女すべての世代で震災は共通のテーマである。このフォーラムのような場で意見交換をするのがいい。二つ目は「若い命を輝かせて、一日一日を大切に。大事なのは命。」という荒谷先生の言葉だ。この言葉には震災のすべてが詰まっていると思った。(教育学部3年、SMさん)
○第2部のディスカッションでは、これからの復興に関わっての学校教育の在り方について考えさせられました。「時系列に沿って記憶の整理をしていくこと」「語ること」「作文の指導と活用」・・・「同じ境遇の人たちと分かち合う、共有する」「自他の命を守る力の育成」「立志の教育」「悲しみを力にすること」「学校現場では“命てんでんこ”にあらず」「街や産業の復興に主体的に参加する」「活動を続けること」「胸を張って生きていく子どもを支えること」と様々の事柄があげられていて、どれも非常に大切なことだと受け止めました。この岩手で子どもとともに生きていくうえでは、子どもの成長や夢をそばで見守り、寄り添い、支えながら、震災の恐ろしさと受けた悲しみや苦しみ、教訓を風化させない努力を絶えずしなければならないと感じました。(教育学部3年、MHさん)
<一般市民の感想>
○教員、現場活動者、学生、と異なる現場のパネリストによるディスカッションをとても興味深く拝見させていただきました。もう少し時間が長ければよかったかなと思いましたが。貴重な場を開いていただきありがとうございました。(20代 男性)
○横浜から来たかいがありました。子供たちと考えることが今までになかったので今回また新たに多くのことを学ぶことができたので風化されないためこれから地元に戻ったら多くの人へ話していきたい。(30代 男性)
○今日は、村井君の思いに触れることができとてもよかったです。子供たちの心を動かすのは子供だと思います。同年代の子のしっかり考え動く姿を目の当たりにした子供たちは何か感じこのままではいられないと思うのではないでしょうか。今日も田老一中の生徒たちは先輩村井君の姿を誇りに思い憧れたと思います。こういう機会がたくさんあればいいと思いました。ありがとうございました。(40代 女性)
【フォーラムの内容】
○開会挨拶及び趣旨説明
岩手大学地域防災研究センター副センター長 越谷 信(工学部准教授)
研究代表 山崎 友子(教育学部教授)
○紙しばい『つなみ』公演 田畑 ヨシ
(2012年「防災功労者」防災担当大臣表彰、2013年岩手日報文化功労者)
○宮古市立田老第一中学校生徒の語り部活動
‐田老第一中学校の現状と語り部活動について:菅井 雅之 校長
‐3年生による語り部活動:津波被災・田老の現状報告、語り継ぎたいこと、震災体験談、校歌
○講演「心のケアと子ども達」宗貞 研(公益社団法人日本国際民間協力会NICCO)
○14:45 パネル・デイスカッション 「復興の鍵は子ども達にある」
パネリスト:葉養正明(埼玉学園大学教授、震災時文部科学省国立教育政策研究
所教育政策・評価研究部長)、佐々木力也(花巻市立八幡小学校校長、震災時
田老第一中学校長)、宗貞研(NICCO)、村井旬(震災時田老第一中学校生徒
会長、現在盛岡第三高等学校2年生)
コーデイネーター:山崎憲治(岩手大学非常勤講師)
コメント:荒谷 栄子(宮古市教育委員会教育委員、震災時田老第三小中学校長)
○特別メッセージ 柳田 邦男(作家)
○宣言:未来を築く被災地の子どもの声 村井 旬 (英訳 James Hall 教育学部准教授)
○閉会 西館 数芽(工学部教授)